第35回 眼科写真研究会・抄録
■ 日本眼科写真協会創立40周年記念特別講演:
【演題名】 「加齢黄斑変性とパキコロイド関連疾患」 【所属・演者】 名古屋市立大学大学院医学研究科 眼科学教室 主任教授 安川 力先生 |
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【内容】
滲出型加齢黄斑変性(AMD)の病型として、通常の脈絡膜新生血管(CNV)を伴う典型AMDとは異なる特殊型として、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)と網膜血管腫状増殖(RAP)に分類されていたが、光干渉断層計(OCT)の解像度の向上や広角眼底カメラの登場で脈絡膜の詳細な観察が可能となり、PCVは典型AMDやRAPと異なり脈絡膜の肥厚、いやゆる「パキコロイド」を伴う症例が多いことがわかり、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)などと共に「パキコロイド関連疾患(Pachychoroid spectrum diseases: PSDs)」の概念が登場した。
PSDsに共通する病態の特徴として、(1) 脈絡膜や強膜の肥厚 (2) 渦静脈の向かう静脈の拡張(Pachyvein) (3) 網膜色素上皮(RPE)の萎縮 (4) 脈絡膜毛細血管(choriocapillaris)の脱落 (5) 不定型のPachydrusenなどを伴うことが多い。病態仮説としては、①Uveal effusionと関連した病態と考える静脈鬱滞説(Venous-overload)②ストレスやステロイドとCSCの関与から考える動脈/交感神経説 ③RPE/choriocapillaris説などが提唱されている。
典型AMDの中でRPEの下のCNV(1型MNV)と、PSDsに含まれるOCTでRPE下の丈の低い面状の間隙(double-layer sign)の所見を呈する異常血管網を有するpachychoroid neovasculopathy(PNV)の鑑別は、後者が光線力学的療法(PDT)が有効であることから重要である。また、CSCとPNVの鑑別も前者が網膜光凝固で治療できる場合があるので重要である。
本講演では、私の考える病態仮説も交えながら、PSDs、典型AMD、RAPの画像の特徴と治療選択の留意点などについて解説する予定である。